- 摂食障害の治療って何するの?
- カウンセリングって何?どんなことを話すの?
- 入院は必要?
こんな悩みに答えます。
摂食障害の治療って何をするのかイメージしにくいですよね。
この記事では摂食障害の治療方法についてお話します。
実際に心療内科に通っている私が、一般的な摂食障害の治療の流れをお話します。
摂食障害の治療は栄養療法・心理療法・薬物療法の3種類があります。
そのひとの状態に合わせて治療を行います。
摂食障害は治せる病気です。
そして、治療しないと治りにくい病気でもあります。
どんな治療が行われるのか知っておけば、病院へ行くハードルも下がりますよね。
摂食障害は治療を早く始めた方が治りやすいという報告があります。
摂食障害で悩んでいるなら、早めに一歩を踏み出しましょう。
そして、食べ物にとらわれない、「食べる」以外の小さな幸せを感じられる、充実した人生を取り戻しましょう。
摂食障害の治療方法
摂食障害は心と体の両方から治療を行います。
摂食障害はひとそれぞれ原因、症状、環境などが違います。
その人に合った治療をする必要があります。
現在、摂食障害を専門的に診療しているのは、主に心療内科や精神科です。
一般的な摂食障害の治療の流れを紹介します。
通常はクリニックに定期的に通院(外来)して行います。
- お医者さんと話をして信頼関係を作ります
- 摂食障害について説明を受けて理解を深めます
- 治療の目標を考えます
- 症状を記録し観察します
- 体の症状の治療をします
- 食事指導を受けます
- 食事で足りない分は栄養剤を使います(栄養療法)
- カウンセリングを行います(心理療法)
- 補助的に薬物療法を行います
摂食障害の治療方法は大きく3つに分かれます。
栄養療法・心理療法・薬物療法の3種類です。
1つずつ解説していきます。
栄養療法
・基本的には普通に食べたり飲んだりすることで栄養を取る。
・栄養剤を用いることもある
・体重が増えない場合は、鼻からチューブで栄養剤を入れる(入院治療)。
・体の症状が重い場合は、血管から栄養を入れる点滴を行う(入院治療)。
・栄養士による栄養指導も行われる。
処方された栄養剤(エンシュア)を紹介
私は通院開始時、入院をするほどの低栄養ではありませんでしたが、あきらかな低体重だったため、エンシュアという栄養剤を処方されました。

この栄養剤は、経腸栄養剤と言って、液状の処方食です(処方箋がないと買えない)。
寝たきりの人がこれだけあれば生きていけるような栄養の詰まった液体です。
ふつうに飲み物として飲むこともできますし、チューブを通して胃の中に入れる方法でも使えます。
体に必要な栄養を効率よく取れるように作られています。
炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラルと全ての栄養がバランスよく入っています。
少量で効率良く栄養が取れる、つまり、高カロリーです(1缶250mlで250kcal)。
拒食状態の患者が飲むには抵抗を感じると思います。
味は少し薬っぽい感じであまり美味しくありません。
ストロベリー味は飲みやすかったです。
心理療法

心理療法とは?
心理士などの専門家との対話を通じて、心理的に問題を抱える人の考え方・行動・感情などに変化を起こし、症状や問題行動を無くしていく治療方法です。
心理療法は精神療法とも呼ばれ、いろいろなやり方があります。
心理療法として最も一般的に行われるのがカウンセリングです。
その他にも認知行動療法、対人関係療法、家族療法などあります。
カウンセリング
医師やカウンセラーと1対1で対話をする治療です。
専門の施設やクリニックなどで行います。
対話をすることで、問題点を整理し、解決への糸口が見つけていきます。
カウンセリングは、答えを教えてもらうものではありません。
自分自身の力で立直るきっかけを作り、考え方を整理するためにサポートをしてもらうのがカウンセリングです。
摂食障害(過食嘔吐)のカウンセリングでは、どうしたら過食や嘔吐を止められるか話し合います。
そして、達成できる目標を立てます。
少しずつ過食や嘔吐をコントロールする方法を身につけていきます。
認知行動療法
認知行動療法とは、「認知(考え方)」と「行動」の両方に働きかける治療法です。
体型や体重に関するゆがんだ考え方を修正し、過食や嘔吐などの行動を変えていきます。
過食症に対する認知行動療法は、「過食の回数と排出行動の回数を軽減すること」を主目的とします。
食事日記などの記録を付けて、「規則的な食事習慣」や「過食をしたいときに別の行動を取ること」によって過食の頻度を減らしていきます。
・2018年4月から認知行動療法が過食症に対して保険適用となりました。
・認知行動療法を最後まで終えた人の40〜50%は過食と排出行動の完全消失に至ったとの報告があります。
※対応している病院は限られています
対人関係療法
心理療法の1種です。
「重要な他者(自分の情緒に最も大きな影響を与える人)」との「現在の関係」に焦点を当てた治療法です。
コミュニケーションのパターンなどに注目し、対人関係を改善していきます。
※対応している病院は限られています
家族療法
家族間の問題が摂食障害を長引かせる要因のひとつになっている場合に、家族関係を修復する治療法。
家族も一緒に面談を受け、みんなで率直に話し合い、解消の方法を探る。
※対応している病院は限られています
ガイデッドセルフヘルプ
認知行動療法を活用した、より簡略な方法。
心理教育(病気について学ぶ)&症状モニタリング(症状を観察・記録する)&生活の規則化を行う。
「セルフヘルプ」とは専門家の助けを借りず、自身の問題を当事者で解決すること。
「ガイデッドセルフヘルプ(指導付きセルフヘルプ)」は、症状を自分でコントロールできるように、援助や指導を受けながら、自分で努力をする方法。
自分の取り組みを医師、心理士、栄養士に報告し、アドバイスを得ながら、自分でコントールする治療法です。
過食症への効果が報告されています。
※対応している病院は限られています
集団療法
心理療法の1つです。
摂食障害の患者同士でお話しをします。
患者でグループを作り、治療者をまじえて、集団で話し合うことによる治療です。
苦しみを共感しあえる人たちとの出会いの中で心の開放と自己洞察を深める効果があります。
「闘病している人と話したい、摂食障害が良くなっている人を知りたい」という場合に役立ちます。
他の治療方法の補助として取り入れる方法です。
メリット
・なんでも話せる友人ができる
・共感できる
・孤独感絶望感がうすれる
・人に良い点と悪い点を見ることがより深い自己分析につながる
デメリット
・人と自分を比較する
・自分の症状は軽いと思う
・ほっておいてもまだ大丈夫だと思う
・嘔吐や下剤などの排出行動を学んでしまう
基本的には病院で治療を受けながら補助的に行う治療方法です。
グループの探し方
・医師からの紹介
・インターネット(自助グループを探す)
・出版物(集団療法を行っている病院や自助グループが掲載された書籍や雑誌)
効果のエビデンス(根拠)が知られる心理療法
きちんと効果があったことが報告されている心理療法は以下の4つです。
- 拒食症(思春期症例)に対する家族療法
- 過食症に対する認知行動療法
- 過食症に対する対人関係療法
- 過食症に対するガイデッドセルフヘルプ
拒食症に効果があったという報告は少ないのが現状です。
薬物療法

現在、日本では摂食障害が適応疾患に含まれる薬剤はありません。
海外では、過食症に対する抗うつ剤の効果が報告されています。
摂食障害における薬物療法は、単独ではなく、栄養面の改善、生活リズムの改善、心理療法など他の治療方法と併用して行うことが望ましいとされています。
効果が報告されている薬物
過食症:選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)(フルオキセチン、フルボキサミン)
拒食症:非定型抗精神病薬(第二世代抗精神病薬)(オランザピン)
私の薬物治療の内容を紹介
私の場合は、摂食障害だけでなく、うつ状態との診断が出ています。
摂食障害とうつ状態の因果関係は分かりません。
うつ状態に対しての薬物治療も一緒に行っています。
【摂食障害への栄養療法】
・栄養剤(エンシュア)
・ビタミン剤
【低カリウム血症】
(摂食障害による体の合併症)
・カリウム製剤
【不眠症】
・不眠症治療薬(デエビゴ)
【うつ状態】
・抗精神病薬(オランザピン)
入院治療

摂食障害の治療は基本的に通院で行われます。
それでは、入院するのはどんなときでしょうか?
入院基準
- 著しい低体重(標準体重の70%以下)と栄養失調
- 体の症状が重い(歩けないくらいの衰弱や意識障害など)
- 食事を全くとれない
- 通院治療で体重が回復しない
- 精神的に不安定で自傷行為や自殺をする可能性がある
入院先
- 身体面の治療は内科
- 精神症状が強ければ精神科の閉鎖病棟
入院期間の目安
1~3カ月程度
目的と治療
- 低栄養状態からの回復
⇒栄養療法(経口投与、経鼻チューブ、点滴による栄養剤の投与) - 食習慣の改善
- 不安や抑うつなどの精神症状の改善
⇒薬物療法(抗うつ薬や向精神薬)
入院中より退院後が重要と言われており、自宅においても適切な食生活を継続するための努力が必要です。
入退院を繰り返すひとも多いようです。
まとめ:摂食障害の治療に対応したクリニックに通院
- 摂食障害は治せる病気
- 心と体の両方から治療を行う
- 基本的にはクリニック(心療内科・精神科)に定期的に通院して治療を進める
- 心身の状態が悪い場合には入院治療を行うこともある
- 摂食障害の治療方法は ①栄養療法 ②心理療法 ③薬物療法 がある
- 栄養状態が悪い場合はまず栄養療法を行う
- 治療のメインは心理療法
- 補助的に薬物療法を行う
関連記事:【摂食障害の治療Q&A】自力で治せる?病院に行くべき?治療費はいくら?治るまでの期間は?
さいごに:かたよった情報に注意
インターネット上には摂食障害に関する情報があふれています。
治療方法に関する情報もたくさん出てきます。
しかし、かたよった情報が書かれていることもあります。
「本当に効果があるのか?根拠(エビデンス)があるのか?」を常に疑いながら見た方がよいです。
病院のブログだからという理由で100%信頼できるとは限りません。
摂食障害は専門病院が少ないので治療先を探すのに苦労することもあるかもしれません。
最初は公的機関に相談するのが安心です。
お住まいの地域の精神保健福祉センターや保健所などに相談してみましょう。
精神保健福祉センター一覧
摂食障害は原因がひとそれぞれ違うので対処方法も人によって違ってきます。
個人ブログに書かれている治療方法は、その個人に合った方法であって、あなたに合う方法とは限りません。
情報の取捨選択に気を付けながら、少しずつ前に進んでいきましょう。
この記事の参考にした情報元
・摂食障害情報ポータルサイト
https://www.edportal.jp/pro/index.html
・国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
https://www.ncnp.go.jp/cbt/guidance/about
・摂食障害の認知行動療法 永田 利彦
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjghp/23/4/23_355/_pdf
・千葉大学
https://www.cocoro.chiba-u.jp/recruit/ed/CBT.html
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